鉄路を駆ける日々

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【乗車記】伊予灘ものがたりはコスパ抜群の絶景観光列車【バースデイきっぷ四国豪遊(10)】

次の列車はあの人気観光列車「伊予灘ものがたり」です!

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「伊予灘ものがたり」について

「伊予灘ものがたり」は愛媛県の海沿いを走るJR四国の観光列車で、同社のブランド「ものがたり列車」の一つです。

あくまでも普通列車なので、特急料金無しで乗ることができます。それに加えて食事がセットではなくオプション方式になっているため、とてもお財布に優しい観光列車です。それにも関わらず手厚いおもてなしを受けながら美しい伊予灘と肱川の景色を楽しめるとあって運行開始以来人気を集め続けています。

時間が早い順に”大洲編”、”双海編"、”八幡浜編”、”道後編”の4本がある中で、今回私は朝の”大洲編”を選びました。もちろん行程の都合もありますが、もっと大きな理由は一番取りやすい列車だからです。この後の”双海編”や”八幡浜編”と違い、出発時刻がかなり早く基本的に松山に前泊しないと乗れない*1のでかなり空いています。夕陽が売りの”道後編"は八幡浜発なので少し長く乗れてお得ですが、今の時期は日没に間に合わない*2ので却下しました。空いていると言っても発売からまもなく”残席僅か"となっていて、その人気の程が伺えます。

 

乗車記

「伊予灘ものがたり」の車両は夜の間松山駅の裏手*3に止まっています。一つ前の「しおかぜ・いしづち10号」が発車するとまもなく入れ替えが始まり、8時13分頃に入線しました。入れ替えの間に乗車口に専用の赤いマットが敷かれ、アテンダントさんは出迎えの準備に入りました。

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海側の窓向きで固定された座席*4は適度な柔らかさで、鉄道では珍しくクッションが付いているのでとても快適でした。

複数人縛りの観光列車が多い中、「伊予灘ものがたり」には「おひとりさま」向けの席が確保されていて(しかも海側)、JR四国の愛を感じます。こうして格安の「バースデイきっぷ」や普通の乗車券での利用者にも門戸が開かれているので、意外にも一人での利用が多く、十分満喫できます。

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松山駅や松山運転所から見送りを受けて旅が始まります。たった2両の列車にもかかわらず、アテンダントが合わせて5人も乗務していました。かつてのVSE*5もびっくりの手厚い体制です。そんなアテンダントの方々は、食事の準備をすると同時に各座席に訪れ、丁寧に一組ずつ挨拶をして行きました。

綺麗な内装とは対照的に古めかしいエンジン音を響かせながら松山の街を抜けると、食事券の回収とともに予約制の食事が提供されました(私は頼んでいませんでしたが…)。まだ海も山もよく見えませんが、”海線”に入るまでの時間も退屈せずに食事を楽しめ、そして美しい車窓をじっくりと味わえる仕掛けになっているのでしょう。

しばらくすると、列車は先程折り返した伊予市を華麗に通過しました。実は伊予市を通過するのは「伊予灘ものがたり」だけで、俊足を誇る「宇和海」でさえ全列車が停まります*6

向井原で”山線”と別れると、林の向こうにちらほらと海が見え始めました。このあたりで「伊予灘ものがたり」名物の食事を注文しました。とは言っても予約制の食事は手が届かないので、今回は車内販売の「伊予灘らぶかん」です。ケーキだけなら600円、紅茶をセットにしても1000円とリーズナブルです(普段の食事に比れば、”清水の舞台から飛び降りた”値段ですが、何も頼まずに降りるのはJR四国にあまりにも申し訳ないです)。クリームの甘みとみかんの甘酸っぱさが絶妙にマッチして大変美味でした。

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松山から1時間弱、ちょうど旅も折り返し地点といったところで最大の見所となる海辺の駅、下灘駅に着きました。当初はここから乗り降りすることができたものの、今では”下車観光”しかできません。それでも10分程停まって写真撮影を楽しめます。穏やかな伊予灘をバックに列車を撮影したり、駅のポスターを眺めたりしているとあっという間に停車時間が過ぎてしまい、急いで車内に戻りました。

冬の“大洲編"の時間はまだ太陽高度が低く、写真を撮ると車両が暗くなってしまいます。

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自席に戻るとびっくり、外に出ている間に埃がかからないよう、アテンダントが食事にラップをかけておいてくれたのです。この気配りには恐れ入りました。

残りのケーキを頂きながら伊予灘を眺めていると、もう一つの見所「串の鉄橋」に差し掛かりました。ここはちょうど千葉県の内房線の「山生鉄橋」と同様、海の上を通っている橋として知られていて、四国有数の有名撮影地でもあります。

列車は次の喜多灘でも停車しました。ここもまだ海に近いものの、真の停車理由はホーム上に伊予市と大洲市の境界があるためです。ちょうど境界線を跨ぐように列車が止まり、アテンダントさん手作りの看板について放送されると、乗客から笑みがこぼれました。こうして何もないところから乗客を楽しませようと努力する姿勢はとても素晴らしいもので、JR四国を応援したくなります。

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こうして大洲市に入り次の長浜の集落に差し掛かると、徐々に伊予灘は遠ざかって行き、やがて山里の景色となりました。列車は大洲の街に吹く「肱川あらし」*7で有名な肱川に沿って伊予大洲を目指します。

終点伊予大洲が目前に控えた最後の駅五郎では、駅に野生のタヌキがやってくることに因んで「たぬき駅長」と称した地元住民の歓迎を受けました。ここに限った話ではありませんが、運行開始から4年が経った今もなお、沿線住民が積極的に手を振ってくれるのは驚異的なことではないでしょうか。いかにこの列車が愛されているかが伝わってきます。

五郎を過ぎると、お土産に大洲市の名産品*8やクーポン券の入った袋を受け取り、再びアテンダントさんからの挨拶を受けるとあっという間に伊予大洲に着いてしまいました。名残惜しかったけれど、折り返し準備に迷惑をかけてしまわないよう急いで下車し、ホームで別れを惜しんでいると、向かい側のホームに特急「宇和海」がやってきました。午前中の便ではカバーし切れない八幡浜からの乗客や、降りてから松山で観光したい乗客にとっては極めて便利な設定ですが、あまりに完璧過ぎて大洲の街に繰り出すことはできませんでした。

こうして再び「宇和海」に乗り、今度は”山線”経由で松山に戻りました。こっちも豪快なディーゼル特急の走りを堪能できる素晴らしいルートでした!

※道中、愛知からいらした女性の方といろいろとお話させて頂き、ケーキまで奢っていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。楽しいひと時をどうもありがとうございました。

 

www.myrailwaytravel.net

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*1:高松5:17発の「いしづち101号」でも間に合いますが、普通の観光客はやらないでしょう

*2:沈んだ直後もまた美しいものの、やはりベストシーズンまで取っておきたかったのです

*3:つまり松山運転所

*4:山側の座席もあります

*5:2005年のデビューから2016年までは、通常のワゴン販売ではなく各座席で注文を取って品物を届けに来るシートサービスが行われていて、当時は10両(定員は伊予灘ものがたりの約7倍)に6人という体制でした

*6:かつては通過する列車もあったようです

*7:「肱川おろし」という説もあるようです

*8:酢味噌だったと記憶しています